木曜日は、今クールで一番ドラマが充実している日。
「七瀬ふたたび」「小児救命」「風のガーデン」「夢をかなえるゾウ」
ついでだけど、NHKのBS2では「タイタニア」のアニメも放送中。
このうち医療ものの「小児救命」と、
命について考えさせられる「風のガーデン」のテーマ曲が
偶然とはいえ非常に似通った印象なのがおもしろい。
そう思うと、小児救命は本当に運が悪いというか不憫になるね。
ただでさえ小児医療の現状を描きたいのか
小児科のクリニックを舞台にした恋愛ドラマにしたいのか
はたまた若い小児科医の成長を描きたいのか分からない
中途半端な,地に足のついていない仕上がりだというのに、
よりによってその続きの時間帯に「風のガーデン」があるなんて。
こんなことだったら、いっそ同じ時間帯だった方が良かっただろうね。
そしたら比べられることもなかったろうに。
てか、録画して見比べる人もいるのだろうか?
それにしても「風のガーデン」はすごい。
もちろん、遺作となった緒形拳の演技はすばらしい。
自分の死を覚悟し、演技以上のものをみせているのも分かる。
だがなによりも、そんな奇跡のような偶然でさえ
作品に入れ込んでしまう倉本聰の不思議な力に驚かされる。
今日の放送でも、中井貴一演じる実の息子と対面して
16年ぶりに本音で話し合うシーンは、とても印象的だった。
緒形はもちろん、中井の演技ももちろんすばらしかった。
しかし、そんなことより緒形の方に留まったトンボに目がいった。
緒形が1ショットで話しているシーン、右肩に突然、赤とんぼが留まる。
中井との2ショットになると、
二人の間にあったペットボトルにも赤とんぼが留まろうとする。
再び緒形の1ショットに戻ると、まだ肩には赤とんぼが……。
このシーンが、どういう順で撮られたのか分からない。
普通に考えれば、1ショットだけをまとめて撮り
後から2ショットを撮ったのだろう。
2カメもしくは3カメでの1発撮りとは考えにくい。
だから同じトンボが1ショットの時は緒形の肩に留まり、
2ショットの時にはペットボトルに留まったのかもしれない。
若しくは、トンボは2匹いて
2ショットの時にも緒形の肩にはトンボがいたのかもしれない。
いずれにしても、このシーンを通じてトンボが出演していた。
そしてそれを、撮影スタッフがOKとしたということだ。
ひょっとすると、何度もテイクを重ね
結構な時間をかけて撮影されたのかもしれないのに。
少し話は変わるが、「風のガーデン」をみていて
倉本聰と宮崎駿について考えたくなった。
いずれ劣らぬビッグネームで、どちらも確実にヒットを飛ばす。
だが、なぜ私は倉本聰が好きで宮崎駿は好きではないのか?
そのヒントの一つが、なんとなく見えた気がした。
倉本の作品には、実体験に基づくリアリティ
言い換えれば「実感」というべきものがあるからだと感じた。
それは、倉本作品が富良野を舞台にしているから、
という単純な話ではない。
もちろん、富良野の自然や人々、空気など
倉本の周りにあるものが影響を与えていることは間違いない。
だが、それらをひっくるめた全てが倉本自身であり
それがそのまま作品に投影されているのだと思う。
テーマやストーリーはもちろん、登場人物の人となりや背景、
彼らが発する言葉のひとつひとつが
様々な形で倉本の身体に取り入れられ熟成した「実感」だから。
そこには「こうすれば人は感動する」とかいった計算はない。
例えそういう計算が、倉本のどこかにあるのだとしても
作品中にはそういった気配を全く混ぜ込まないのが倉本だと思う。
それが宮崎との違いだと思えるのだ、私には。
これって、当たり前のことだが音楽と全く一緒だと思った。
合唱コンクール全国大会で、すばらしい演奏をたくさん聴いた。
だがその中で、演奏者の実感のこもった演奏がどれだけあっただろう。
コンクールなのだから、一定の演奏レベルがなければ
支部大会や全国大会に駒を進めることができない。
しかし、だからこそ全国大会のような憧れの舞台に立つグループには
皆が憧れるような実感のこもった演奏をして欲しいとも思う。
残念ながら、テレビの世界で倉本作品が特異であるように
実感のある好演奏にはなかなかお目にかかれない。