第138回天皇賞(秋)は、50年ぶりの牝馬ワンツーによる決着となった。
勝ったのは、去年64年ぶりのダービー牝馬となったウオッカ。
2着は、去年の最優秀3歳牝馬ダイワスカーレット。
同世代の名牝2頭が、史上まれに見る豪華メンバーが揃ったレースで
史上まれに見る激戦を繰り広げた。
勝ったウオッカは、ダービー後は精彩を欠きいていたが
今年5月のヴィクトリアマイルで2着、続く安田記念で復活を遂げた。
武豊はヴィクトリアマイル以来3度目の騎乗で、このコンビは初勝利。
長い写真判定の末の決着は、99年の有馬記念での名勝負
グラスワンダーvsスペシャルウィークを思い出させる。
このレースで武は、スペシャルウィークに騎乗。
体勢ではスペシャルウィーク有利に見えたが、
勝ったのはグラスワンダー。
判定写真は、ゴールの瞬間の1枚だけグラスが前だったという。
これが引退レースとなったため生涯グラスに勝てなかった
スペシャルウィークは「勝負に勝ってレースに負けた」ともいわれた。
今回のレースでは、映像で見る限りはダイワの方が優位に見えたし
検量室のホワイトボードにもダイワ優位で書かれていた。
しかし、結果的には武が、99年の逆の立場になったようなものだ。
そのせいか、インタビューを受ける武が
複雑な心境のような、ほっとしたような表情に見えてしまった。
いずれにしても、いつも冷静な武にしては
珍しく安堵や喜びを露わにしたレース後の表情だった。
一方のダイワスカーレットは誠に残念。
去年、桜花賞や秋華賞ではウオッカを抑えて優勝。
エリザベス女王杯も制して“最強牝馬”の座についた。
さらに、有馬記念で2着して牡馬にも比肩する実力を示した。
今日も、スタート直後からハナに立つと
前半の1000メートルを59秒台で回り、レースの流れを支配した。
4コーナー手前で一息入れた後、最後の直線で二の足を使い
外から追い込んだウオッカとディープスカイと
再びデッドヒートを演じ、見事に2着になった。
つまり、完全にダイワスカーレットのレースだったのだ。
牝馬ながら、これだけの強い競馬ができる馬は滅多にいない。
だから私は、これからもダイワスカーレットの方が
ウオッカよりも強いと信じ続ける。
そもそもウオッカは、牡馬顔負けの立派な馬体をしていて
牝馬らしからぬ風格がある(ダービー馬だからいいけど)
それはまるで、牡馬を押しのけて天皇賞(秋)を制した
エアグルーヴのようだ。
それに対して、エアグルーヴの1歳下のライバル
メジロドーベルちゃんは、牝馬選では無敵の強さだが
牡馬と混じるととたんに弱弱になってしまうかわいさを持っていた。
ダイワスカーレットは、牡馬に混じっても強いが
女らしさを捨てていないところが好きなのだ私は。
(完全に個人の好みだけだけど)
それにしても、3着のディープスカイも強かった。
もちろん、NHKマイルカップとダービーの統一王者なのだから
3歳馬の中では図抜けた実力であることは疑う余地がない。
だが、1分57秒2というレコード決着の中で、
歴史的名牝2頭を向こうに回しての3着なのだから。
まるで99年有馬記念で3着し、その後怒濤のG1・6連覇を果たした
テイエムオペラオーのようではないか。
次のJCでは要注目ですよ。