うちの若者(ドイツ語読みで“う゛ぁかもの”)たちも
この頃ようやくやる気を出して「上手くなりたい」と思い始めたようだ。
もともと田舎には音楽をアカデミックに楽しむような環境はなく
彼らの欲求を満たし、なおかつモチベーションを
維持するための刺激が少ない。
またそもそも、(指揮者なしの)我々のように異端的な
音楽を目指すグループ自体が少ないのだ。
したがって、何をやるにつけても方法論を手探りで見つけねばならなかった。
そのため、彼らに対する説明やフォローを
十分にできていなかったのも事実である。
そこでこの際、基礎の基礎に立ち戻って必要な知識を書き留めておきたい。
というのがこの項の趣旨なので、面白くも目新しくもありません。念のため。
まずは、純正律と平均律の差から。
純正律の響きを目指そうとする時、しばしば
「その音は(長調の)第三音だからもっと低めに」とか
「五度はもっと広く」といった指示をすることがある。
現代の音楽では、(十二)平均律が事実上のスタンダードになっているが、
その背景には、音楽の主役が声楽から器楽へと移っていったことがある。
またピアノなどの鍵盤楽器が、音楽教育の現場で
中心的な役割を果たしていることも大きな理由である。
本来、人間の声は演奏中でも自由に調律が可能であるが
以上のような理由から前出の指示、
つまり平均律との差を調整する必要が生じるわけだ。
ド |
レ |
ミ |
ファ |
ソ |
ラ |
シ |
ド |
|
周波数比 |
1 |
9/8 |
5/4 |
4/3 |
3/2 |
5/3 |
15/8 |
2 |
セント |
0 |
204 |
386 |
498 |
702 |
884 |
1088 |
1200 |
差(セント) |
204 |
182 |
112 |
204 |
182 |
204 |
112 |
|
平均律との差 |
0 |
+4 |
-14 |
-2 |
+2 |
-16 |
-12 |
0 |
上記の表は、純正律と平均律の差を数値化したもの。
セントとは平均律の半音を100としてそれぞれの音程を表している。
1オクターブは半音12個分なので1200セントということになる。
表を見れば、第三音(ミ)がいかに低いかがよくわかる。
純正の長三度はそれだけ狭いのだ。
一方、五度(ソ)は数値上はわずか2セントの違いだが、
感覚的には平均律に比べてかなり広い。
澄み切った青空のような、明るい五度を鳴らすことが
純正の響きへの第一歩なのである。
実際の演奏では、この表の通りには使えないものもある(レファラなど)。
しかし、純正律と平均律がいかに違うかを実感するための足がかりとして
こうした数字を知ることも有効では?